盛岡広域企業立地セミナー2017−2018



−−−− 広域圏で取り組むべき地方創生 −−−− 

 岩手県の中央に位置する盛岡広域地域は、東北新幹線や東北自動車道などの高速交通網が早くから整備され、その地理的優位性を生かし北東北の拠点として都市機能を発展させて参りました。
 一方、恵まれた自然を活かした農畜産業は、食の安全が叫ばれている昨今、その質の高さは国内において高い評価を得ております。また山と川の恵みにより、きれいな空気と水によって酪農を育み、田畑を潤し、食のブランドは今や全国にとどろくようになって参りました。観光面でも温泉、スキー場、牧場、湖、森林・・・豊富な資源が溢れています。再生可能エネルギーも水力、地熱、風力、太陽光、バイオマスなどの適地です。地盤が強固であり、地震に強い地域であることが国から発表されています。
 盛岡広域8市町では、首都圏の企業の皆様及び既に盛岡広域地域に立地されている企業の皆様を対象に、当地域の産業立地施策等について、より一層のご理解をいただくため、標記セミナーを毎年開催しております。当日は、「地域経済の再生」をテーマに株式会社日本総合研究所 主席研究員 藻谷 浩介 様からご講演をいただくとともに、当地域の産業振興施策や工場等立地環境についてご紹介申し上げることとしております。また、会場には盛岡広域市町の紹介パンフレットを各種取り揃えておりますほか、ビュッフェ形式の交流会も予定しております。


日時: 2018年2月8日(木)16:30〜20:00(受付16時〜)
会場: ホテルグランドパレス 2階ダイヤモンドルーム(千代田区飯田橋) 03-3264-1111
交通:東京メトロ東西線・半蔵門線、都営新宿線九段下駅 徒歩3分(JR、東京メトロ有楽町線・南北線、都営大江戸線飯田橋駅 徒歩7分)
主催:

盛岡広域地域産業活性化協議会

対象: 首都圏の企業(特に地方への展開をお考えの企業)、盛岡広域地域に既に立地している企業、盛岡広域地域に関心のある企業
※盛岡広域の物産や観光、復興支援にご興味のある企業様もどうぞ
参加費: 無料ですが、事前申し込みが必要です
内容: 第1部 講演・プレゼンテーション 16時30分〜18時10分
    ・ご挨拶(主催者代表プレゼンテーション)
      谷藤裕明盛岡市長
(盛岡広域地域産業活性化協議会会長)
    ・主催者紹介(盛岡広域8市町長:盛岡市、八幡平市、滝沢市、雫石町、
      葛巻町、岩手町、紫波町、矢巾町)
    ・講演 「地域力と地域経済再生の秘策(〜キラリと輝く盛岡広域圏〜)」
      日本総合研究所主席研究員 藻谷 浩介 氏)
第2部 交流会 18時30分〜20時

主催者代表挨拶

プレゼンテーション

谷藤裕明盛岡市長(盛岡広域地域産業活性化協議会会長)がプレゼン

『盛岡広域地域の特色と地域産業の振興について』

1.岩手・盛岡広域の企業立地環境について

2.岩手・盛岡広域地域の人材について

3.盛岡広域地域の産業活性化への取り組み

カラフルな写真と共に8市町の特色を分かり易く紹介くださいました

盛岡広域7市町長の挨拶


まず最初に谷藤裕明盛岡市長の挨拶、続いて各市町の首長が挨拶
左から熊谷 泉紫波町長、瀧澤光也岩手町副町長、挨拶する高橋昌造矢巾町長とその後ろに隠れながら背の高さで分かる鈴木重男葛巻町長、
深谷政光雫石町長、柳村典秀滝沢市長、田村正彦八幡平市長、谷藤裕明盛岡市長

講演

演題 : 地域力と地域経済再生の秘策(〜キラリと輝く盛岡広域圏〜)
講師:鞄本総合研究所主席研究員 藻谷 浩介 氏
   
藻谷さんは山口県徳山の生まれで、徳山高校〜東大法学部卒、1988年日本開発銀行(現鞄本政策投資銀行)に入社、1992年コロンビア大学経営大学院に派遣留学して1994年MBAを取り、(財)日本経済研究所調査局に派遣出向で研究員となりました。2007年日本政策投資銀行地域振興部参事役、2012年日本総合研究所調査部主席研究員となりました。経歴は立派ですが、この人の特徴は都市の起源や歴史、盛衰に関して興味を持って、受験生時代には受験科目に関係ない「地理」の独学に励んでいたという点です。当初はほとんどが私費で全国を旅して、開通している日本の鉄軌道(JR・民鉄・公営交通)全線を完乗したというほどです。平成合併前の全国3,200市町村すべて、海外90ヶ国を私費で歩きました。この結果、地域特性を詳しく把握した上で、その都市の抱える問題点を解析し、現場の実例も紹介しながらその都市の中心市街地活性化などまちづくりのあり方を提言する活動が評価され、全国各地で年間400回以上の講演会をこなすというスーパーマン振りです。政府関係の様々な委員も務めています。演題に打ってつけの方でした
講師:藻谷 浩介 氏
山口県生まれ53歳
講演を聴いて・・・・澤藤隆一の感想
 藻谷浩介氏は、ずっこけて足をくじいたとのこと、ステッキをついての痛々しい登壇でした。
 「イメージにとらわれて物事を考えてはいけない、実態をデータから把握して判断すること、自分の目で見て認識すること」の大切さを話されました。先立って藻谷さんがテレビ番組で「アベノミクスで雇用が増えたと言うけれど、実際は人口減少で働き手が減っている、特に団塊の世代が定年を迎えたときにそれを補充する若者が絶対的に不足、それもドンドン減っている、それに見合って企業活動も縮小して行けばともかく、そういうわけには行かないから企業は採用活動を活発にする、女性や高齢者を含めて働き手を募る、けれど人件費総額を急には増やせないから非正規やパート、アルバイトが増える、当然失業率は低下するけれど実質所得が上がるわけではない、そういうことです」と言っていました。具体的に人口実態と働き手の層をデータで示されると、なるほどそういうことか、と納得しました。チョット早口ですが、一度ジックリ聞いてみたいものだと思っていたら、講演で話される、これは行かずばなるまいと出掛けたわけです。テレビ以上に納得しました。
 この方は、「里山資本主義」という言葉を作ったひとです。中心市街地に必要なのは、まず人が住んでいること、次に職場があること、それから公共施設あるいは病院といったコミュニティー機能があることであり、最後に商業があることだと主張されます。お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを用意しておこうという主張です。ただし、里山資本主義は、マネー資本主義の否定では決してなく、都会よりも田舎暮らしのほうがいいという単純な話ではないとしていて、日本社会が抱える地域の過疎化、少子化と急激な高齢化という問題を克服する可能性を秘めているのが里山だと述べています。「普通に真面目で根気のある人が、手を抜きながら生きていける社会が、里山にはある。里山の暮らし方は世界に通用する」と言います。
 藻谷さんの言うところでは、「エネルギー価格が上がり始めたのが1995、96年。日本の生産年齢人口が減り始めたのもちょうど同じころで、それらが重なったことにより、日本企業はエネルギー価格上昇を商品価格には転嫁せず、団塊の世代が高齢化で労働市場から退出するのに合わせて、人件費の総額を減らすという方向で調整した」のだそうです。

 藻谷さんいわく、「日本人の多くが言っていることは、四、五十年前のイメージに基いている」のだそうです。不動産を持っていれば安心といまだに多くの人が思っていると言います。藻谷さんは、その例として聴衆にクイズを出しました。「四、五十年前と比べて自殺が増えていると思いますか」・・・「増えている」という人が多数でした。「四、五十年前と比べて殺人すなわち他殺が増えていると思いますか」・・・「増えている」という人が多数でした。「空き家が増えているのは地方ですか、大都市ですか」・・・「地方です」という人が多数でした。「老人が増えているのは地方ですか、大都市ですか」・・・「地方です」という人が多数でした。「違います、すべて逆です」というのが答えでした。
 藻谷さんは、自殺者が減っている、他殺の件数も減っているということをデータで示されました。日本がいかに安全な国かということを藻谷さんは指摘しました。藻谷さんがおっしゃるには、今五十歳以上の人は九十歳まで生きると言います。広島カープファンである藻谷さんは、野球になぞらえて「人生は9回裏まである」、と言うのです。9回裏すなわち90歳まで生きると考えて人生設計しなさいとのこと。2010年から2015年の5年間で東京の人口は36万人増えて、うち34万人は若者、全国から若者が東京に移動している統計が出ています。人口が増えているのは東京以外では神奈川、愛知、埼玉、沖縄、福岡県です。一方で日本で64歳以下が減っていないのは沖縄県だけ、65歳以上の人口増日本一は東京、空き家が多いのは大都市圏です。これから大都市圏は老人比率が増えて、医療、介護の問題に直面する、特に厳しくなるのは東京だというのです。将来を考えたら東京は暮らしやすい街ではなくなるそうです。
【写真上】ステッキをついて講演される藻谷浩介氏



人生は9回裏(90歳)まである!
表裏5歳刻み、成人してから65歳まで働くとして、働いている時間の合計と余暇時間の合計はその間共に10万時間、退職後の有効活動時間も10万時間、もしかしたら延長戦も有り得ると考えておかなければなりません
 講演の最後に藻谷さんは、日本全国飛び回っているけれど、好きなところは盛岡と山形県だとおっしゃいました。風土、人間性、食べ物、いろいろ理由を述べられました。盛岡市役所の脇を流れる中津川には、秋に鮭が遡上し、冬には白鳥が飛来します。日本全国どこにもこれだけの大きな街でこのような綺麗な川が街中を流れる都市は無いと言います。しかも周辺の山々からの伏流水で市内に環境省の「日本名水百選」に選ばれたおいしい水の湧出地が二箇所もある珍しい街、食料は周辺の農村から手に入る、水力発電、地熱発電、風力発電、太陽光発電などのエネルギー資源はたっぷりある、すなわち藻谷さんの言うところの「里山」の要素が完璧に揃っていると言うのです。こうしたリソースを生かして人が集まる街づくり、職場を確保し、公共施設あるいは病院といったコミュニティー機能を整備すれば、安心安全のネットワークを求めてまた人が集まると言います。なるほど、企業来い来い、という前に、人が集まる仕組みづくりが大切なんだなと納得しました。
 また盛岡には岩手大学という素晴らしい大学があるじゃないですか、とおっしゃいました。工学部も農学部も研究では有名だし、東日本大震災では津波防災指導をしていた地域が被害が少なく、発生後は災害復興に大学を挙げて取り組んでいるところが素晴らしいとおっしゃいました。
 大都市に人が集まると子どもを産まなくなる、保育所云々より、根本が違っていると言います。里山の暮らしで安心安全のネットワークの中に居れば自然と子どもが産まれるのだそうです。どこかで女は子どもを三人産めと言った政治家が居ましたが、そういう問題ではないようです。必死に頑張らなくても手を抜きながら生きていける場所が必要なわけです。確かに東京には若者が集まってくるけれど、みんな必死に頑張らないと生きていけない構造になっています。周りを見回すと、結婚するとか子どもを産むどころではないという人がゾロゾロ、なるほど納得です。
 ちょっと藻谷さんは盛岡広域を褒め過ぎなんじゃないかと思いましたが、日本のすべての地域を知っている人が言うことですから、これは間違いないでしょう。藻谷さんは長州生まれなので、戊辰戦争で賊軍とされた会津や南部の方々から見ると憎いかもしれないけれど、実は吉田松蔭が脱藩したのは、1822年獄門の刑に処せられた南部藩の相馬大作(本名:下斗米秀之進)に対する追慕の念から、秋田・大館の現場を訪ねることも目的の一つだったということを話されました。まっすぐで、いざとなれば責任を取って腹を切る、南部藩士のいさぎよさ、藻谷さんが盛岡広域の人が好きだとおっしゃる、その原点にある話なのだなぁと感じました。

交流会の写真


平野、澤藤、谷藤、山川の各氏

長澤晋さんと登田真由子さん

高橋昌造矢巾町長、熊谷泉紫波町長を囲んで、ふるさと矢巾会や在京雫石町友会の面々

雫石町の郷土料理

締めの挨拶は岩手県盛岡広域振興局・宮野孝志局長