第16回雫石町民劇場「オラホの町の新婚さん  

2019年2月10日(日)、11日(月)と在京雫石町友会メンバーで岩手県雫石町の町民劇場観劇に行ってきます。入場料前売り千円です。雫石町役場の前にある中央公民館・野菊ホールで行われます。そして鶯宿温泉・ホテル加賀助に泊まります。
 さて第16回雫石町民劇場は「オラホの町の新婚さん」です。雫石町在住の雨宮恵子さんが原作・脚本、小原千里さんが脚色・演出です。主人公「倉木たかし」役の山崎忍さん(39)は鶯宿在住、御所地区の地域づくりに活躍、ヒロイン「伊奈のぞみ」役の吉田麻里子さん(33)はさいたま市出身、地域おこし協力隊として2017年3月まで活躍し、現在はレインボー健康体操の指導者です。役者は全員雫石町民ですが、伊奈のぞみの父役は町議の堂前義信さん、昨年町議会の広報担当として山崎留美子さんと一緒に見えて、有楽町交通会館でお会いしました。町役場の職員も出ますね。

雫石町のホームページで詳細が紹介されています  クリック

Shizukuishi広報しずくいし2019年1月号より
あらすじ】農村地区の公民館に男女十人程度が集まっています。町にテレビ局から取材とロケの申し込みが来たので、どう対応するかというのが議題です。「オラホの町の新婚さん」というTV局の取材テーマロケを引き受けるかどうかでワイワイ、問題は可能か否かです。町の宣伝と活性化にもつながるTVロケなので、引き受けたいのはやまやまですが、我が地区に該当する新婚さんは、予定を含めても居ません。そこに、東京へ行ったままだった伊奈のぞみが帰って来ます。倉木たかしは、兼業農家の次男で、現在農協に勤めていて独身です。伊奈のぞみとは幼なじみで、中学・高校と、皆に知れ渡った熱々カップルでした。しかし、のぞみは高校卒業と同時に、手ひどくたかしを振って東京へ行ってしまいます。たかしのプロポーズに、「倉木たかしは大嫌いだっ」とのセリフを吐いて...たかしは傷つき、そのまま独身を通しているのです。のぞみの家は専業農家ですが、後継ぎの兄が亡くなってしまい、爺ちゃんと父母は気落ちしています。落胆して元気の無くなった爺ちゃんが、また、いつものように婆ちゃんとの思い出を探して、フラリと長い散歩に出てしまいました。一同大騒ぎで捜索に走ります。のぞみもたかしも、むろん捜索に加わっています。そして、その捜索をきっかけに、新たなカップルが活躍します。のぞみとたかしは、かつてデートした神社でばったり再会します。そこは、爺ちゃんと婆ちゃんの若い頃の逢い引きの場所でした。鉢合わせの二人は、最初はツンケンと他人行儀でしたが、話しているうちに、まだお互いを好き合っている事を確認し合ってわだかまりが解けて行きます。のぞみは言います。「爺ちゃんと父ちゃん、そして母ちゃんと田畑を守って行く私を、大きな心で守ってくれる人と結婚する。だから…」と思いもよらない条件をたかしに突きつけます。さあ、たかしはどうする? そして、もう一組のカップルは?
この【あらすじ】を見てどう思いますか?男女のデートとか、昔は逢い引きだったとか、しかもそこは神社なのです、神様が見てますよ。プロポーズとか結婚とか、そんな話題がテーマで、地区の集会、爺ちゃん−父母−娘の三世代家族、行方不明だとみんな総出で捜索する・・・こんな光景、在京の私たちの周りにはもうありませんね。映画やテレビの中に残っているくらいです。本来人間の営みというのは、小さな子どもが元気に遊んで、成長して、若い男女となり、いろいろあって、結婚して子どもが生まれて、父母は年老いて爺ちゃん婆ちゃんになってやがて死んでいく・・・そうしたことの繰り返しです。日々の暮らしの中で、人々は助け合って生きていきます。それが「生活」でした。そういうものが失われたから、少子化になってしまったのです。本来人間と言うものは本能的に子孫を残すために結びつくものです。結婚相談所などというものがビジネスになること自体が異常です。それどころか、何かあるとハラスメントだと大騒ぎになります。どうしてこんな社会になってしまったのか? 答えを探しに、岩手県雫石町の野菊ホールに行って来ます。

      

■ 在京雫石町友会一行で雫石町民劇場観劇へ
 在京雫石町友会の一行で2019年2月10日(日)大宮駅9:33→11:38雫石駅着こまち9号で岩手県雫石町へ行き、町民劇場観劇、鶯宿温泉に泊まり、11日(月)帰宅しました。鶯宿温泉・ホテル加賀助は連休と言うこともあって大入り満員、休日にもかかわらず、町議会議長始め、町役場の男性幹部2名、女性課長2名が夜の宴会に駆け付けて下さり、ポケットマネーで歓待下さいました。ありがたいことです。当初町長が来て下さる予定でしたが、不幸がありソチラへ行かなければならないということで、2月8日(金)の盛岡広域企業立地セミナー(九段下・ホテルグランドパレス)後の交流会で歓談しました。鶯宿温泉は体が温まる温泉なので、外は氷点下ですが全く寒くありません。夜に入浴した加賀助6階大浴場の窓の外はシンシンと雪が降っており、朝見たら車の上には雪が積もっていました。盛岡駅までマイクロバスで送っていただきましたが、盛岡はあまり雪がありません。

■ こまち号で雫石町へ→雫石銀河ステーション
 雫石駅「雫石銀河ステーション」は、1997年3月に秋田新幹線開通と同時に建設された、雫石町のコミュニティー施設と駅舎との合築施設です。駅舎は宮澤賢治をデザインコンセプトに小岩井農場をイメージした北欧農舎風のデザインで、高齢者や障害者が円滑に利用できる建築物となっていますが、ホームからわざわざ2階に階段を上らないといけない構造になっています。何故かと言うと改札口が2階にあるからで、改札を出ると待合室やファストフードコーナーの「こびりっ子」、お米や野菜、小岩井乳製品・雫石牛、お土産品などを取り揃えている「驛田舎産直」があります。特にこの産直は安いし、雫石の魅力が盛りだくさんの商品が揃っていてお奨めです。

雫石銀河ステーション

■ いろいろな催し物;雫石観光物産センター
 2階の産直からエレベータで1階に降りました。ここには観光物産センターがあり、観光案内や木工品、南部鉄器、鍛造アクセサリー、織物、ガラス細工などの展示販売、またこの日は「第5回しずくいしDEフェルトくみあい展」が開催されていました。岩手県内外で活動しているフェルト作家さんたちが、心を込めて作成した人形やコースター、帽子などさまざまな作品が展示販売されています。ここで買い物して金を落とし、1階の「ごろすけほーほー」で食事しました。以前は雫石牛のステーキなどが味わえる地産地消レストラン「雫」でしたが、ちょっと高過ぎたか、お客さんが駅前の「いしや食堂」や「熊源食堂」に流出したためか、結局閉店となりました。この日はこの2軒の駅前食堂が休みで、「ごろすけほーほー」は結構お客さんが居ました。海老天そば(おにぎりや小出し付き)¥810を頂きました。コーヒー飲み放題サービスもありました。 
雫石銀河ステーション1F;観光物産センター

■ 圧雪で凍りついた道を歩いて...
 なお駅前食堂は雫石駅の乗降客のための食堂ではなく、働く人たちが車で来て入る食堂なので、日曜日は休みなのだそうです。確かに雫石駅の乗降客相手では商売にならないでしょう。「熊源食堂」に関してはエピソードがあり、福田こうへいがコンサートで「熊源食堂」のことを紹介したため、ファンが大挙して「熊源食堂」に押しかけたところ、この日のように休日休みでがっかりして帰ったとのこと、大きなビジネスチャンスを逸したと言う話です。
 雫石町役場の前にある中央公民館・野菊ホールまで歩いて行こうということになりましたが、折角だから途中車道ではなく、広養寺の境内を通ることになりました。お寺が三つ並んでいて西から東へ広養寺(曹洞宗)=上寺、臨済寺(臨済宗)=中寺、永昌寺(曹洞宗)=下寺です。我が家の菩提寺は永昌寺です。藤本達也さんという住職さんは面白い人です。右写真は、広養寺を過ぎて、秋田街道に出る前の小道です。ご覧の通り、道は圧雪が凍りつき、テカテカ、ツルツル、とてもじゃないが革靴ではムリです。しかしそこは全員雫石町出身者、きちんと雪道用の靴を履いてきましたので問題ありません。

凍り道を慎重に歩きます

■ 雫石町中央公民館野菊ホールへ
 雫石町の町民劇場は、2月10日(日)と11日(月)の二日間、雫石町中央公民館野菊ホールで行われます。歩いて到着した野菊ホールの前には、既にたくさんの人が列を成していました。
 第16回になる今回のテーマは、「オラホの町の新婚さん」というTV局の取材テーマに該当するカップルが居ない現状をどうするんだ、と言う話と、認知症のお年寄りが徘徊するのを地域のみんなで捜し回る、と言う話の二つでした。結局、雫石町でも少子高齢化が進んでいるのです。地元に残って家を継ぐ人も専業農家は少ないのです。農家の仕事は大変なので嫁に来てくれる人を探すのも大変だ、いきおい独身者も増えるわけです。若者は町を出て、都会へ行く人も居ます。小学生が減って、小学校の統廃合が進んでいます。
 主人公「倉木たかし」とヒロイン「伊奈のぞみ」は中学、高校と有名な熱々カップルでしたが、高校を出て伊奈のぞみは東京へ行ってしまいます。

雫石町中央公民館野菊ホール
 しかし伊奈のぞみの兄が死んで、跡継ぎが居なくなったこともあり、のぞみは雫石へ帰ってきます。東京では家賃7万円の狭いアパートに住み、満員電車で通勤する日々、水も空気も食べ物もうまくない、給料から家賃を払って、食費など生活費を払ったら手元にはさっぱり残らない、そんな生活がいやになったこともありました。
 再会した二人は再び仲良くなりますが、のぞみは結婚に当たり、「くらきのぞみ」にはなりたくないと言います。名前が良くないというのです。たかしに伊奈家に婿入りしてくれるなら結婚すると言います。「いなたかし」と紙に書いて、右から読んだら「しかたない」・・・たかしは承諾する、というオチでした。

入場券の半券

■ 雫石町でも顕著な少子高齢化
 劇の中で、結婚したい男女が出会う場作りとして、雫石町内ではなく、盛岡のホテルが会場になると言う話でした。劇中では「メロトポリタンホテル」と言ってましたが、皆さんお分かりですよね。盛岡駅前のホテルです。結局少子高齢化の問題は、雫石町でも結婚しない男女が結構居て、結婚しても共働きで子どもはあまり作れないと言う実態が劇中で吐露されました。働く場があって、収入がそこそこあって、楽しいコミュニティがあれば良いのでしょうが、今やそんなところはありません。したがって人が多くて働く場がある大都会に出て行くのです。しかしそこでの生活も家賃は高いし、自然も少ない、雫石では当たり前に食べられた美味しい漬物も無い、どうしようかと思いながら気付いてみれば結婚もしないままに時が過ぎて行く・・・ということのようです。

■ コミュニティを守ることの大事さ
 「オラホの町の新婚さん」が訴えたかったことは結局、男女が出会って結婚して子どもが出来て・・・という人類の歴史、種の保存の法則を、当たり前のようにやっていこうということだったのでしょう。むしろこのような町民劇場の舞台に立つ、演じるための練習をする、観劇に家族や友人、地域の人たちが応援にやってくる、終わった後の達成感、こうしたことをワイワイやることこそが地域を守ることにつながるんだ、と言うことだったのではないでしょうか。都会でも出来るはずですが、現実は近隣の人さえ何処の誰か知らないのが実態です。雫石ではアソコの誰がどうしたという話が普通に語られます。したがって悪いことはできません。認知症老人が行方不明、地域のみんなで捜し回る・・・こういうコミュニティを守ることが大事です。そのために行政はどうすべきか、これが課題ですね。

■ 『楽しい日本』をつくるのが大事
 2019年2月8日亡くなられた堺屋太一さんが、どうして少子高齢化の日本になって、東京への一極集中、地方の過疎化が進むのかについて論じておられます。詳しくは日経ビジネス・遺言;日本の未来へ・堺屋太一氏の遺言「2020年までに3度目の日本をつくれるか」をご覧下さい。「オラホの町の新婚さん」を見ていて、そうだ、若者が若いうちに結婚して、子どもを産んで、若者が東京に行かなくても良い社会、『楽しい日本』をつくるのが大事なんだ、町民劇場に取り組むような人達はその楽しさを追求しているんだなと感じた次第です。国のシステムを変えなければダメという堺屋太一さんの遺言、肝に銘じましょう。